基本的にごみのブログ

ゴミとか日常とか

目に入る景色の大きさは

北海道の農家で働いていた時に、上司と、なぜ北海道に来たのかという話になった。

高校生の頃、夏休みに北海道に、一人で旅をしたことがあった。私は食べることが好きだったので、旅の目的は美味しい食べ物だった。というか、鮭とばにはまっていて、大量に買って帰る事が最重要事項だった。あとは、なんとなく地図でみたときに、日本の一番北にあって、九州よりも大きな広い場所、というイメージを持っていて、その景色を楽しみにしていた。その時は一ヶ月もいなかったと思う。

「その時の体験があって少し馴染みがあったのと、旅の最後の方に「一年丸々いて、季節それぞれをみたい」と思ったからですかね。他にも理由はありますけど。」と言うと、上司はフンと鼻で笑った。「それに、大きいじゃないですか。風景が。」付け加えると上司はこう言った。「目に入る景色の大きさは変わんねえじゃねぇか。」私は絶句し、同時に「なんか違う」と思った。すごく反論したかったけど良い返しが見つからず、「なんか違いますよ。」とだけ言ったが、お互いに納得しなかったので「必ず返事を用意してきます。」と一方的に約束をし、今に至る。あれから月日は流れ、三年が経った。上司はそのことをきっと完全に忘れていると思う。私その間に沢山旅をし、大きな景色を沢山みてきた。そして、たまにその上司の言葉を思い出しては「絶対違う。」と確信を深めていった。ただ、その上司と一緒に旅にでて色んな景色を見ても、同じセリフを言いそうな気はすごくする。

なんでここまで、上司の言葉が残っているんだろう。そろそろ忘れてもいいかもしれないな、と北海道の写真を見ながら思った。ただ、もし上司と再開したら、旅の写真を沢山見せてあげようと思う。そしてその時北海道の農家で働きながら見たもの、畑からあがる水蒸気や、朝方の風に乗って飛ぶ蜘蛛の糸アイヌの唄やハクトウワシが止まっている木のことを、風景として私の中にいまだにあることを自慢したいと思う。「だから何なんだよ。」と笑われそうだけど。

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