基本的にごみのブログ

ゴミとか日常とか

昔の家の記憶

私の実家は一度建て直している。昔の家を壊す時に妹は産まれていないから、妹にとっての「家」の思い出は、全部今の家の思い出なんだろう。

私の古い記憶、遡れる限りの古い記憶には、昔の家のことが多い。

家の目の前に私が通っている幼稚園があったので、校庭の端のフェンスによじ登って、よく家を見ていた。目の前に自分の家があって、猫が庭を散歩しているのが見える。フェンスを乗り越えれば、すぐに家に行けたのに。

家はまあまあボロボロだったらしい。父と母がそういうので、人にはそう言っていたが、本当はボロボロとは思っていなかった。というか、それが良いと思っていた。確かに、階段は軋むし壁は剥がれる、土壁は落ちるし雨の時は大量に雨漏りをした。家自体も傾いていたようで、父曰く「部屋の隅にビー玉を置くととんでもない速さで転がっていった」らしい。今思い返すとそうだけど、当時はそれを誇りに思っていた。友達に家を指差しては、「ね、うち、ボロいやろ?」と自慢していて、友だちが「うわ、ほんとだ!ボロ!」と言うのを賞賛と受け取っていた。自慢の家だった。

家の前には庭があり、松の木が庭をぐるりと囲むように生えていた。登ろうとしたけど、松の木の皮は沢山ささくれているので登れなかった。庭には大人の腰丈ぐらいに雑草が生い茂り、私が入ると見えなくなる。草まけするのが痛痒くてあまり入らなかったけど、昆虫やカナヘビが沢山いて、よく抜け殻を拾った。家と庭の間にはオレンジ色の細かいタイルが通路のように敷いてあり、そこを通っていくと洗濯物を干す場所に出る。紫陽花もその辺に生えていて、母と猫がよくいた。猫は外に置かれたベビーシートの上でよく寝ていた。干し場に入らずにまっすぐ行くあたりで、私の記憶は靄がかかっているけど、たしか裏は柿の木とフェンスがあったはずだ。小学校に上がった私はチャイムのなる5分前ぐらいにそのフェンスを乗り越えて校長先生に迎えられながら走って学校に行っていた。徒歩2分ぐらいの距離に学校があるのに、よく遅刻していた。

家の玄関の横には車庫があり、燕が巣を作ろうとする跡があった気がする。玄関の扉は覚えていない。入ると右側に靴箱があり、その下にクワガタやカブトムシを入れた虫籠がある。私はよく生き物を飼いたがり、またよく殺した。世話をしきれないのだ。クワガタをお年玉で買ったはいいものの、世話をせず放置して2年ぐらいたち、おっかなびっくり蓋を開けるとカサカサの土からクワガタが生きて出てきて驚愕したことがある。いったい何を食べて生きていたんだろう。

玄関に上がると細長い通路があり、まっすぐ進むと右手にドアがある。居間と寝室、キッチンがある。左手にはトイレとお風呂だ。

思い出し始めると、古い記憶がどんどん流れてきてとめどない。でも、この家はもうなくて、家の記憶が更新されることはない。きっと忘れていくだけだから、思い出したら追記していこうと思う。

父と母ともう1人の妹は、あの家のことをどう思っていて、どんな記憶をもっているんだろうかと思う。それを擦り合わせたら、あの家が甦るような気がしている。

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